稀有な出会い

今年の初めに、講師をしている音楽教室での演奏会がありました。本社が西宮の沢にあるのですが、意外にも(失礼!)良いホールがあるのです。でも、残念ながらグランドピアノ1台とチェロのアンサンブルには若干奥行きが少ないのでリサイタルは難しいかと思います。それでも、そのホールが弦楽器の音で満たされたのは初めてだったので良かったと言っていただきました。その時に、ホールを設計された方がいらしていてお話する機会がありました。私が以前留学していたアーヘンの工科大学からよく来られる日本語の上手な方がいて・・・という話から、「私その方とコンサートへ行ったことあります!よくしゃべる方ですよね」なんて、札幌の西宮の沢でこんな会話が繰り広げられるなんて思ってもいませんでした。なんと世間はせまいのでしょう・・。

その設計師さんはよく音楽を聴かれるようで、私が最近ピアノに興味があると言ったら「チューレックのゴルトベルクを聴いたことがありますか」と仰りました。恥ずかしながらゴルトベルクの演奏はグレン・グールドの演奏以外ちゃんと聴いたことがありませんでした。そして、教室の専務の方にCDを渡しておくから聴いてみてください、と言われて今手元にあるロザリン・チューレックのCDは私の愛聴盤になっています。初めはただの先入観で男性だと思っていたのが実は女性でした。チューレックのゴルトベルク変奏曲を聴いていると無心になります。何の物音もない、暗闇で聴くと不思議な感覚に陥ります。その時はじめて、「死にたくなるような音楽ってあるんだ」と思いました。本当に、死を意識してしまうほどの静謐感に溢れているのです。

『ゴルトベルク変奏曲』はバッハが不眠症の伯爵のために作曲し、ひとつの主題を30通りに変奏させてまた元の主題にもどってくるという、すべて演奏すると1時間以上もかかる大曲です。眠ることを前提とした曲なので、ただ淡々と旋律が流れるのです。

心の底から感動できるものに出会える回数は生きているうちにどのくらいあるんだろう。自分もそうでありたい、といつも願ってはいるのですが。

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