視覚的にみる音(曲目解説)

7月8月は瞬く間に過ぎてゆきました。今年は、友人たちとの浴衣デビューがなかなか楽しかったです。生徒さんのお誘いで出かけた北大ビアガーデン(毎年開催されているらしいですが、全然知らなかった!)では、北大農場でつくられたチーズを使ったピザなどが食べられて意外と(失礼!)美味しい時間を過ごすことができました。こんなふうにすごしていても、札幌の夏はある日突然秋風と入れ替えに去っていってしまうのです。秋も芸術的感性が研ぎすまされて好きなのですが、やはり札幌は夏がイイ!

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↑今年新調してみた浴衣。

さて、そんなこんなでもう来週に迫ってきた「VirtuRose(ヴィルトゥローズ)サロンコンサート」ですが、リハーサルもいよいよ佳境をむかえております。まず演奏曲目。

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◆パッサカリア(ヘンデル/ハルヴォルセン編曲)

もうこれは私たちの十八番となりつつあります、ヘンデル作曲ハルヴォルセン編曲のパッサカリア。ヴァイオリンとチェロのデュオでは数少ないメインのレパートリーになります。ヘンデルのパッサカリアとは、ヘンデルが作曲したハープシコード組曲の第7番の主題によるものです。

ヘンデルはバッハと同じ生まれ年のバロック時代の作曲家ですが、このハープシコード組曲第7番パッサカリアの主題を用いて後の時代のヨハン・ハルヴォルセンという作曲家・指揮者としても活躍していたヴァイオリンの名手がヴァイオリンとヴィオラのために編曲したものが今では有名です。
これぞヴィルトゥオーゾといった、聴き手にとっては派手な技巧を観られて満足感のある曲。

◆ヴァイオリンとチェロ(ヴィオラ)のためのデュオ ト長調(モーツァルト)

モーツァルトをお腹いっぱいお客様にお聴かせするというのは、演奏家側の技量にかかっています。まず、基礎力がなければ決してそれは実現しません。なにせ、モーツァルトの音楽のほとんどは音階で成り立っているのです。ハノン(←初心者から上級者まで、毎日最初に練習する音階の教則本)を音楽的に綺麗な音で、正しく弾くのがとても難しいのと少しだけ似ています。要素が少ないわりには表情豊かで人間味あふれているのがモーツァルトの音楽の特徴です。この曲は、ヴァイオリンとチェロの2本の楽器だけでそのモーツァルトの世界観を表現するのですが、オペラ作曲家であったモーツァルトの世界観そのものです。楽器が2本であろうとオーケストラであろうと、その大きさは変わりません。

◆ヴァイオリンとチェロのためのソナタ(ラヴェル)

今回のメインプログラムです。ラヴェルの室内楽は、とにかく難しい。技術的にも、室内楽的にも。というのが私の印象で、ヴァイオリンの能登谷さんから何回かお誘いがあったにも関わらず「もうちょっと待って・・・もうちょっと待って・・・」と拒み続けてきた曲で、最終的には「あなたそれでも芸大卒業生ですか!!」というキビシイお言葉をいただいて楽譜を読んでみた次第です。。やっぱり難しい・・・どうやって弾くの・・・と思いつつも昨年から共演してきて最近ようやくお互いの好みや息づかいなどがわかるようになってきた今がタイミングなのかなと重い腰を上げてみましたら、かなり面白い曲です。

ドビュッシー、プーランク、ミヨー、オネゲルなど名だたるフランスの作曲家たちが活躍していた同じ時期に、ラヴェルも音楽活動していたわけですが、その頃のフランス音楽の流行として複雑多様な和声をいかに上手く取り入れるか・・という風潮が仲間内ではあったらしいですが、ラヴェルはいち早くそのぐるぐるした中から脱出して、和声や装飾的なものを一切放棄する方向に向かったといいます。

そんな時期に書かれたのがこのヴァイオリンとチェロのためのソナタ。音楽というのは、ふつう和声が変化していく上でメロディーが自由に動くことで聴く人にも心地よさを与えるものですが、この曲ではそのようなものはほとんどありません。しかし、メロディーを描く横の線がとても美しいんでです。その線が幾重にも重なり、または、ずれて重なったり色々な変化を見せるのですが、それはなんというか、視覚できく音楽のような、現代アートを目で追っかけるような、そんな感覚です。そして、ここがラヴェルの一番難しいところなのですが、一字一句書かれた通りに弾かなくてはその画は完成しないということ。昨年『マダガスカル先住民の歌』というラヴェルの曲を演奏した時にも感じましたが、ラヴェルの音楽には、完璧な美しさがあります。

一般的には『亡き王女のためのパヴァーヌ』や『ボレロ』などが知られていますが、『マダガスカル先住民の歌』や『ヴァイオリンとチェロのためのソナタ』はとてつもなくラヴェル的なメロディーであると感じます。ラヴェルの音楽に一環して言えるのは、東洋的なメロディー、個性的なリズムであると言えます。作曲家は自分以外の多くから影響を受けてそれぞれの個性を確立するものですが、やはりラヴェルも東洋文化、いうまでもなく日本の文化にも(ラヴェルは日本の骨董品のニセモノを家に飾るのが好きだったそうです。そして来客から「まあ、素敵!」とほめられようものなら、すかさず「ところがね、これ、ニセモノなんですよ!」と得意げに言ったらしいのです・・)興味があったそうです。また、ストラヴィンスキーにまだ未発表の『春の祭典』の楽譜を見せられた時にラヴェルは熱狂したという話もあり、ストラヴィンスキーの破天荒なリズムには少なからず影響を受けていたはずです。もちろん、今回演奏するこのソナタにもその特徴は大いに現れていて、かえって日本人には馴染みやすい曲なのではないか、とひそかに思っているのです。

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